「中学に入ると英語が難しくなる」と聞くと、小学6年生のうちに何かやらせたほうがいいのではないかと気になるのではないでしょうか。書店には中学英語の先取り教材が並び、塾の「中学準備講座」の案内も届きます。
結論から言うと、入学前にやる価値があるのは、文法の先取りではなく「アルファベットを正しく書けること」「英語の音と文字が結びついていること」「日本語と英語で語順が違うと知っていること」の3つです。
中学の英語が難しく感じられるのは、お子さんの能力の問題ではなく、小学校と中学校で教える内容の決まりが大きく切り替わるからです。中学校では、小学校で習った600〜700語の上に、新しく1600〜1800語が積み上がります。
この記事では、文部科学省の学習指導要領とその解説をもとに、中学の英語で何が変わるのか、入学前の2か月で何をすればいいのか、そして「やりすぎ」がなぜ逆効果になりうるのかを整理します。
※この記事は2026年10月30日時点の情報をもとに作成しています。学習指導要領や検定の制度は改訂されることがあります。
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結論:先取りするなら「文法」ではなく「音と文字」
入学前の準備として、次の3つを入れ替えの目安にしてください。
- やる価値が高い: アルファベットの大文字・小文字を正しく書く、英単語を音から文字へ結びつける、日本語と英語の語順の違いに気づく
- 急がなくていい: be動詞と一般動詞の使い分け、三人称単数のs、不規則動詞の活用などの文法項目
- やらなくていい: 中1の教科書を1年分先に終わらせること
理由は単純で、文法は中学校で全員が最初から教わる前提になっている一方、「音と文字の結びつき」はそれまでの積み重ねが前提にされているからです。 小学校の英語は音声が中心で、文字を書く練習は限られています。ここに差がついたまま中学へ入ると、授業の速さについていきにくくなります。
どういうことか、小学校と中学校の決まりの違いから見ていきます。
中学の英語は、小学校の英語と何が変わるのか
今の小学生と中学生は、2017年(平成29年)に改訂された学習指導要領で学んでいます。全面実施は小学校が2020年度、中学校が2021年度です。保護者の方が受けた英語の授業とは、始まる学年も中身も変わっています。

📍小学5年生から、英語は「成績のつく教科」になっている
今の小学校では、英語は次の2段階に分かれています。
- 3・4年生「外国語活動」: 年間35単位時間(週1コマ程度)。「聞くこと」「話すこと」が中心で、英語に慣れ親しむことが目的
- 5・6年生「外国語」: 年間70単位時間(週2コマ程度)。教科として扱われ、「読むこと」「書くこと」が段階的に加わる
文部科学省のQ&Aは、高学年の教科化について「知識・技能」「思考・判断・表現」「主体的に学習に取り組む態度」の3観点で評定を行うことになりますと説明しています。つまり、英語に成績がつき始めるのは中学校からではなく、すでに小学5年生からです。
中学校は年間140単位時間(週4コマ程度)で、時間数が2倍になります。
📍「読む・書く」の深さが、中学で一段上がる
小学校の外国語科でも「読むこと」「書くこと」は扱いますが、文部科学省のQ&Aは、「聞くこと」「話すこと」と同程度までの指導を求めるものではないと明記しています。
小学校で求められているのは、アルファベットの大文字と小文字を四線上に書けること、十分に音声で慣れ親しんだ語句や表現を書き写したり、例文を参考に書いたりできることまでです。
中学校では、ここから自分で文を組み立てて書くところまで進みます。「書き写せる」と「書ける」の間にある段差が、中1の最初に実感される難しさの正体のひとつです。
📍覚える単語が、一気に増える
学習指導要領が示す語数は次のとおりです。

- 小学校(3〜6年): 600〜700語程度
- 中学校(1〜3年): 小学校で学習した語に、1600〜1800語程度の新語を加えた語
改訂前の中学校は「1200語程度」でしたので、単純に見ても新しく覚える語が400〜600語増えています。しかも、小学校で扱った600〜700語はすでに知っているものとして上積みされます。
ただし、ここで慌てる必要はありません。解説には、「1600〜1800語程度」の全てを生徒が発信できるようにすることが求められているわけではないとはっきり書かれています。聞いたり読んだりして意味が分かればよい語(受容語彙)と、話したり書いたりできるようにする語(発信語彙)は別で、まずは受容語彙として触れる範囲を示したものだと説明されています。
「1600語」は中学校で新しく指導する語数の下限、「1800語」は目安であって上限ではない、という注記もあります。
📍文法の用語が出てくるのは、中学から
ここが、保護者の方にいちばん知っておいてほしい点です。
文部科学省のQ&Aは、小学校の外国語科について「動名詞」や「過去形」という文法の用語や、変形などの用法の指導を行うのではなく、I like playing soccer.のような表現として聞いたり話したりできるようにすることが重要だとしています。
つまり、小学生は過去形を「使って」はいるけれど、「過去形」という名前と作り方は習っていない状態で中学へ入ります。中1で急に難しくなったように感じるのは、知らなかったことが出てくるからではなく、今まで体で覚えていたものに名前と規則がつくからです。
扱う文の種類も変わります。小学校で扱うのは単文だけで、重文・複文は中学校からです。 疑問文も、小学校はbe動詞や助動詞(can、doなど)で始まるものと、疑問詞(who、what、when、where、why、how)で始まるものまでです。中学校ではmayやwillで始まるもの、orを含むもの、which・whoseで始まるもの、そして感嘆文が加わります。
📍授業そのものが英語で進む
今回の改訂では、中学校に「授業は英語で行うことを基本とする」という規定が新しく入りました。解説は、これを「指導言語を単に日本語から英語に変えることで済むものと誤解してはならない」とし、教師と生徒の間でも英語でのやり取りが行われることを意味すると説明しています。
保護者の方が受けた「先生が日本語で文法を説明し、本文を和訳する」授業とは、前提が違います。英語を聞いて反応する場面が毎時間あるということです。
入学前に身につけておきたい3つのこと
ここまでを踏まえると、入学前にやっておく価値が高いものは絞られます。

1. アルファベットの大文字・小文字を正しく書ける
アルファベットの活字体は、学習指導要領の上では小学校で指導する内容です。中学校の解説も、中学では「語や句、文を書く中で引き続き指導する必要がある」という書き方になっています。つまり、中学校でアルファベットに充てられるのは最初の1〜2時間で、そこからは単語や文を書く中での確認に移ります。 ゼロから1文字ずつ練習し直す前提にはなっていません。
確認したいのは次の点です。
- 大文字26字・小文字26字を、見本なしで書けるか
bとd、pとqを取り違えていないか- 四線のどこに書くか(
gやyは下にはみ出す、bやlは上まで届く)が身についているか。細かい高さは教科書によって書き方が違うので、学校で配られたものに合わせてください
小学校では「書き写す」活動が中心のため、見本を見ずに書くと形が崩れることがあります。ここは入学前に時間をかける価値がもっとも高いところです。
2. 英語の音と文字が結びついている
中学校の学習指導要領は、内容の取扱いの中で「発音と綴りとを関連付けて指導すること」を求めています。
catを見て「キャット」と読める、「キャット」と聞いてc-a-tと見当がつく。この行き来ができていると、新しい単語を覚える負担が大きく変わります。逆にここが弱いと、1600〜1800語を丸暗記で処理することになります。
家庭でできるのは、お子さんの知っている英単語を使って「この音は、どの文字から始まると思う?」と聞いてみる程度で十分です。ローマ字は小学3年の国語で扱うことになっているため、多くのお子さんはすでに知っています。kaがkとaでできていることは分かるはずです。
ただし、ローマ字と英語のつづりは別のものです。 ローマ字は「か=ka」のように子音と母音の組み合わせで決まりますが、英語にはmakeの最後のeのように読まない文字や、cが「ク」とも「ス」とも読まれる文字があります。ローマ字どおりに読むと通じない語がある、と知っておくだけでも、中1でのつまずきがひとつ減ります。
3. 日本語と英語で語順が違うと知っている
小学校の学習指導要領は、文や文構造について「日本語と英語の語順の違い等に気付かせる」ことを求めています。「気付かせる」であって、「説明できるようにする」ではありません。
「私は サッカーを します」と「I play soccer.」を並べて、どこが入れ替わっているかを一緒に見つける。これだけで、中1の最初の単元がぐっと入りやすくなります。文法用語は要りません。
中1が英語でつまずく場所は、時期がある程度決まっている
中学校の学習内容の順序は学習指導要領と教科書で決まっているため、難しくなる場面も、ある程度は予測できます。

4〜5月:アルファベットとローマ字の混同
中1の教科書は、アルファベットの確認と自己紹介から始まります。令和7年度版の年間指導計画では、東京書籍『NEW HORIZON English Course 1』も光村図書『Here We Go! ENGLISH COURSE 1』も、4月にアルファベットを扱う時間と自己紹介の単元を置いています。ここで小学校の「書き写す」止まりだった子が、見本なしで書く場面に出会います。
ローマ字読みのくせが残っていると、makeを「マケ」と読んでしまうような取り違えも起きます。入学前の準備が効くのは、主にこの時期です。
1学期の途中:be動詞と一般動詞が混ざる
I am a student.とI play soccer.は、どちらも「私は〜です/します」と訳せてしまうため、I am play soccer.のような文を作ってしまうことがあります。
この2つを並べて整理する時間は、令和7年度版の年間指導計画を見ると、東京書籍では5月、光村図書では7月に置かれています。1学期のうちに必ず来ますが、時期は教科書によって変わります。
ここは中学校で初めて「規則」として教わる内容なので、先に家庭で教えようとすると、学校の説明と言い方が食い違って混乱のもとになります。 授業で習ってから、家で声に出して確認するほうが確実です。
2学期:三人称単数のsと、語順の組み立て
2学期のうちに、主語がheやsheに変わったときに動詞へsをつける規則、疑問文・否定文の作り方が重なってきます(年間指導計画では、東京書籍は9月、光村図書は12月)。覚えることが増え、「英語が苦手」と言い始める子が出てくるのがこのあたりです。
このとき効いてくるのが、1で挙げた「正しく書ける」と2の「音と文字が結びついている」です。書くこと自体に手間取っていると、規則を覚える余力が残りません。
「やりすぎ」が逆効果になることもある
先取りの相談でよく出るのが、「中1の内容を先に全部やらせたほうがいいか」という問いです。

⚠️「もう知っている」が、授業への関心を奪うことがある
中学校の英語は週4コマあり、授業は英語で行うことが基本とされています。授業の中で英語を使う経験そのものが、学習の中心に置かれている設計です。
先に内容を知っていること自体は悪いことではありませんが、「もう知っているから聞かなくていい」と受け取ってしまうと、いちばん時間をかけるべき言語活動の場を使いそこねることになります。これは確認された効果ではなく考え方の話ですが、先取りの目的は「授業を楽にすること」であって「授業を要らなくすること」ではないと整理しておくと、分量を決めやすくなります。
⚠️1日15分でも、毎日続けば形になる
入学前に扱うのは、上の3つだけです。文字と音、語順の気づきに絞れば、机に向かう時間は1日15分程度でも足ります。
時間を長くするより、毎日続くことを優先してください。 中学の英語は3年間続きます。入学前に英語を嫌いにしてしまうと、取り返すのに時間がかかります。
ゲームの時間を削って勉強に充てるべきか悩んでいる場合は、ゲーム中心の生活を変えたいときに、禁止する前にできる手順をまとめた記事もあわせてご覧ください。
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eスポーツ英会話 eスピ!公式サイト1月から入学までの、2か月の進め方
小学校の卒業前後は行事が多く、まとまった時間を取りにくい時期です。週ごとにやることを決めておくと続けやすくなります。

1月:アルファベットを「見本なしで」書けるところまで
- 大文字26字を、見本を見ずに書く(1日5分)
- 小文字26字を、四線に沿って書く
b/d、p/q、n/hなど、まぎらわしい字だけを取り出して確認する
2月:音と文字をつなげる
- 知っている英単語を10語選び、声に出してから書いてみる
- ローマ字で書ける言葉(名前、好きな食べ物)を英語ではどう書くか調べる
- 英語の本やアプリで、知っている単語を見つける
3月:短い文を声に出す
I like 〜.I play 〜.I have 〜.の3つの型だけで、自分のことを5文言う- 日本語と並べて、語順が入れ替わっている場所を指で示す
- 教科書が配られたら、最初の数ページを声に出して読む(意味は後でよい)
3月に文法の説明を足さないでください。 この時期にやるべきなのは、英語を声に出すことへの抵抗をなくしておくことです。
英検は受けたほうがいい?
入学前の準備として英検を考える方もいます。英検協会が示している各級の目安は次のとおりです。

- 5級: 中学初級程度
- 4級: 中学中級程度
- 3級: 中学卒業程度
つまり、いちばん易しい5級でも、中学校で英語を習い始めてからの内容が前提になっています。入学前に必ず取っておくべきもの、という位置づけではありません。
一方で、受けることに意味がある場合もあります。目標があると勉強が続く子、試験の形式に慣れておきたい子、すでに英語を習っていて力を測りたい子です。その場合も、まず5級からで十分です。
- 5級の試験内容と、受ける前に確かめることを知りたい方は英検5級のレベルと合格点、小学生向けの勉強法をまとめた記事
- 中学入学後に4級へ進む流れを知りたい方は英検4級のレベルと試験内容、学習プランをまとめた記事
- いつから英検を始めるか全体像から考えたい方は英検を始める時期の目安と、入試で使えるまでの道すじをまとめた記事
「話す」の準備は、机の上だけではない
中学の授業は英語で行うことが基本とされています。英語を聞いて反応する場面が毎時間あるということは、ここに慣れているかどうかが、授業の受けやすさに直結します。
ところが、話すことへの慣れはドリルでは育ちません。必要なのは、英語で何かをやりとりする場面です。
家庭で手軽に作れる場面のひとつが、ゲームの言語設定を英語にすることです。遊び方を知っているゲームなら、画面の英語は「知らない文章」ではなく「意味が分かっている場面の言葉」になります。
- マイクラをこれから始める場合の手順はマイクラの始め方と、遊ぶ前の準備・設定をまとめた記事
- スプラトゥーンで遊んでいる場合はルール・ブキ・ステージの英語名と、試合中に使えるフレーズの一覧
英会話の教室を検討する場合は、入会前に体験や見学で確かめられることがあります。比較は子ども向け英語学習サービス7社の体験・見学方法と、入会前のチェックポイントをまとめた記事と、ゲーム好きな小学生向けの習い事8選を学ぶ内容・形式・料金で比べた記事にまとめています。
オンラインで受ける場合に必要な機器や通信環境は、子どものオンライン英会話で準備するものの一覧で確認できます。
入学前チェックリスト
入学までに、次のことができていれば十分です。

- 文字: 大文字26字・小文字26字を、見本なしで四線に書ける
- 文字:
b/d、p/qを取り違えない - 音: 知っている英単語を10語、声に出して読める
- 音: ローマ字と英語のつづりは別のものだと知っている
- 語順: 「私はサッカーをします」と
I play soccer.で、語の並びが違うと気づける - 声:
I like 〜.の形で、自分のことを5つ言える - 気持ち: 英語を声に出すことに抵抗がない
全部できていなくても構いません。7つのうち上の4つ(文字と音)ができていれば、中1の最初の3か月はかなり楽になります。
まとめ:中学英語の準備は「文字と音」に絞る
- 中学校では、小学校で習った600〜700語の上に1600〜1800語が積み上がる(改訂前は1200語程度)。ただし全部を書けるようにする必要はない
- 小学校では文法の用語や変形の指導を行わないため、中1で「名前と規則がつく」段階が来る。文法は学校で教わる前提になっている
- 中学校では「授業は英語で行うことを基本とする」ことが新しく定められた。英語を聞いて反応する場面が毎時間ある
- 入学前にやる価値が高いのは、①アルファベットを見本なしで正しく書く、②英語の音と文字を結びつける、③日本語と英語の語順の違いに気づく、の3つ
- 文法の先取りは急がない。時間を長くするより、毎日続くことを優先する
- 英検は必須ではない。受けるなら5級から
学習指導要領の原文は、文部科学省の中学校学習指導要領(平成29年告示)解説 外国語編で読めます。お子さんの学年で何を扱うかは、学校から配られる教科書と年間指導計画で確認してください。
英語そのものに気が進まないお子さんの場合、入学前に机に向かわせること自体が難しいこともあります。塾も英会話教室も合わなかった小6のお子さんが、英語を好きになるまでの過程をまとめた記事もあります。
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